江戸友禅の歴史と魅力 ~日本三大友禅シリーズ~

日本三大友禅をご存知でしょうか。
京友禅、加賀友禅、江戸(東京)友禅の3つがそれに数えられます。
今回はその中でも江戸友禅の魅力についてご紹介します。

目次

友禅とは

「友禅」とは布に模様を染める技法のひとつで、絹の生地に直接筆で絵を描くように色を付けていく染色技術です。
そのルーツとなった技法は、安土桃山時代から江戸時代初期の「辻が花染」と江戸時代中期の「茶屋染め」と考えられており、元禄時代に京都で生まれました。

江戸元禄時代に扇絵師として人気を博していた宮崎友禅斎が、自分の画風をデザインに取り入れ、模様染めの分野に活かしたことが発端です。

京友禅、加賀友禅、江戸友禅を合わせて日本三大友禅といいます。

江戸友禅の歴史

江戸友禅は、東京都を産地とする友禅染です。東京手描友禅、東京友禅の名でも知られています。
江戸友禅は武家文化、町人文化のもとに生まれました。
京都で誕生した友禅染めは、まず加賀に伝わりその後江戸に伝わりましたが、それぞれ時代背景やお国柄の影響を受けて、独自の友禅染への発展してきました。

江戸に友禅が伝わったのは、文化文政時代(1804〜1830年)で、町人文化が最も栄えた時期です。
友禅の技法が江戸に伝わった経緯は2つの説があります。

友禅が制作された初期の頃は、金箔や刺繍をあしらった華やかなものでしたが、元禄時代、幕府が贅沢を禁止する奢侈禁止令(しゃしきんしれい)を発令したことから、糊と染料のみを使うシンプルなものへと移り変わっていきました。

町人が経済の主導権をとるようになるとともに、模様絵師による手描友禅が発展しました。京都で染められる友禅を京友禅、加賀で染められる友禅を加賀友禅というように、江戸で染められる友禅を江戸友禅といいます。

江戸友禅の特徴

江戸友禅は、全体的に藍や白を効果的に用いて、渋く落ち着いた色合いで描かれています。
余白部分の多いデザインがすっきりとして都会的なのが特徴です。
これは町人文化の粋や侘びの影響を受けて発展したためです。
「磯の松」「釣り船」「網干し」「千鳥」「葦」などの江戸近郊の風景をモチーフとした風景文様が主となります。

一方、模様の一つひとつが比較的大きく絵画的な図柄の京友禅は、色数も多く箔や金銀粉などの加飾が施された華麗さが特徴。同じ友禅でも対照的なのがお分かりになるかと思います。
また、着物を作る工程が京友禅が分業化されているのに比べ、江戸友禅は、伏せ糊と蒸し、水洗以外は、ほとんどの過程を作家一人でおこなっています。

江戸友禅の技法

染め物の工程

江戸友禅の技法に「糊の白上がり」というものがあります。糊伏せした白場(染まっていない白い部分)を、そのまま模様の一部に活かす技法です。
江戸友禅には糸目友禅、蝋纈染(ろうけちぞめ)、無線描(むせんがき)の3通りの技法があり、いずれも防染技法による染色です。
現在は染あがりに、白い糸のような線が浮き上がる糸目友禅が主流となっています。

糸目友禅

糸目とは柄の輪郭線を糸目と呼ばれる糊で囲って防染し、その中に彩色を施します。
糸目の糊は水洗いをすると取れます。

蝋纈染(ろうけちぞめ)

防染に蝋を用いた染色方法で、蝋の割れ目から染液が入り込んで、模様に線が入り独特の味わいが出ます。

無線描(むせんがき)

生地に直接絵筆で絵柄を描き、彩色する技法で、描き上げ友禅とも呼ばれます。防染をしないため、にじんだ部分に柔らかな味わいが出ます。

友禅染には水が必要です。そのため、江戸の友禅職人たちは隅田川や神田川の近くに住んでいたと言われています。
1670年代に染工場が神田川上流域の高田馬場付近に造られたこともあり、多くの染師や染物関連の職種に携わる人達が、このあたりに住んでいたそうです。
染め物産業は、関東大震災や第二次世界大戦を契機に、東京の地場産業として発展を遂げてきました。
現在では新宿区に染物工房が点在しており、その文化を守り続けています。

昭和30年代くらいまでは神田川、妙正寺川などで水洗いをする姿が見かけられていたようです。江戸友禅は、東京手描友禅として、昭和50年3月に伝統的工芸品に指定されました。

日本三大友禅の違い

三大友禅と呼ばれる、江戸友禅、京友禅、加賀友禅をシリーズでご紹介しましたが、それぞれの特徴をまとめてみましょう。

京友禅は、天皇や貴族文化の影響から、雅で華やかな金銀の彩色が特徴です。
絵画的な柄模様が見受けられます。
加賀友禅は、武家文化の質実剛健をもとに、染のみの技法で発展していきました。
また、加賀五彩と呼ばれる基本色の濃淡が活かされています。
そして、江戸友禅は町人文化の粋ですっきりとした江戸好みの友禅として確立して行ったのです。

色数を競った京友禅、加賀友禅に対し、江戸友禅は生地色は単彩であくまでも地味に抑え、その上にすっきりと「粋」の表現を追求しているのがわかるかと思います。
一見地味な背景に明るい色彩でデザインを施すその上品なコントラストが魅力となり多くの方を惹きつけています。

生産工程においては、京友禅、加賀友禅が表現が大掛かりになり分業化が進んだのに対して、江戸友禅は、下絵から仕上げまでを1人の職人が一貫して行います。
江戸時代に生まれた手描き友禅に加え、型紙を用いて大量生産ができる型紙友禅という技法が明治期に誕生し、現在の友禅の多くはこの2つの技法を表現によって使い分けながら作られていますが、江戸友禅は今も手描き友禅が多いそうです。

日本三大友禅シリーズと称しまして、京友禅、加賀友禅、江戸友禅をご紹介いたしました。
それぞれ違った魅力がありますね。
江戸友禅は、そのすっきりしたデザインから、現代でもハレの日に着る留袖や訪問着などで選ばれる方も多いそうです。

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